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SSDプロジェクトは
優良な住宅の供給を通じて、
住まい手に安全と豊かさを提供し、
日本の林業の再生と、
地域経済の活性化を図り、
未来への環境に貢献する事を
目指して、以下の4つの提言をおこなっています。
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大阪木材工場団地協同組合
飲食施設新築事業建物概要解説
SSDフレームシステム採用の施設建築解説です

木の家プロデュース明月社

林野庁:23年度森林・林業白書

SSDP幹事会社:㈱紅中

13/05/06
ホームページ リニューアルのお知らせ

SSDプロジェクトでは、今年度夏期のJAS認定取得の予定を機に、供給商品の改訂を計画しています。従来の製造工程と異なる手法を用いた新規開発商品に全面的に移行します。それに伴い、ホームページも全面的にリニューアルいたします。近日中に一旦閉鎖し、改めてこうかいする事になります。皆様におかれましては、予め御了承頂けますように宜しく御願いいたします。

13/05/05
奈良県十津川村災害復興支援プロジェクト
「ナチュノロジーな家づくりセミナーと住宅相談会」開催のお知らせ

SSDプロジェクトでは、これまでの国産材供給のノウハウを活かし、一昨年の台風で壊滅的被害を被った奈良県十津川村の林業復興を支援する活動を開始いたします。今回は趣旨に賛同する建築家による「家づくりセミナーと住宅相談会」を開催し、参加建築家のパネルと模型による作品展も同時開催します。木材利用ポイントや地域型住宅ブランド化事業の説明コーナーも設けています。参加は無料です。お気軽にお越し下さい。
   ・開催日時 : 2013年6月1日(土)・2日(日)
   ・開催場所 : 大阪ガス(株) 生活誕生館ディリパ千里 1Fホール
   ・詳しくは ▷▷▷ここをクリック

13/05/05
新規開発商品(仮称:SSD JAS 球磨杉・桧) 供給開始先行内覧会開催のお知らせ

SSDプロジェクトでは、JAS認証の新規開発商品を夏期以降に供給開始する事を計画しています。それに先立って、関係者の方々へ、先行内覧会を開催します。当日は、新規商品を木材物理学の観点から、識者に解説していただく事や、SSD材を使用して福祉施設を建設した事例を、担当設計者から語って頂く等のセミナーの開催を予定しています。基本的に関係者を対象として開催の予定ですが、関心のある方は右上の問い合わせメールにて申し込み頂ければ、御参加頂けるよう対処いたします。
   ・開催日時 : 2013年5月30日(木)
   ・開催場所 : 大阪ガス(株) 生活誕生館ディリパ千里 1Fホール
   ・セミナー内容等、詳細決定次第ここに掲載いたします。

13/05/05
新規開発商品 SSD JAS 球磨杉(仮称:JAS機械等級区分製材) 商品概要

左は、当方が九州熊本県上球磨地域にて取り組んでいる所の、国産構造用製材の商品開発において、熱処理工程で使用する装置の性能評価試験を行った際の写真と、温度変化の測定結果のグラフである
この熱処理行程において、当方技術が、径400㍉を超える杉大径丸太をそのままの形状で材の芯部まで確実に処理する事を確認したために、この度の高品質製材商品を提供する事が可能になった。実際には、JAS認定(機械等級区分製材)を取得する、今期夏以降の正式供給開始になる。
当方は、森林・林業の再生に対して、木材産業の構造的観点から見て、最も必要な措置が、根幹である筈の製材製品の需要喚起と考えている。木材自給率50%の数値目標を、合板・集成材や、木質バイオマス等の低価格需要(素材)を中心として達成したとすれば、林家の収入は悲惨な程に縮小し(既にその域に達しているが…) 森林再生は望めないと考えている。
当方で行ってきた。国産製材品の品質確保・確認と高品質化、それらの表示供給等に対する取り組みを、早期に完成させ、評価に値する成果を上げることが、本来の森林・林業の再生に繋がるとの思いを保持しつつ今日に至った。

SSD JAS 球磨杉・球磨桧(仮称)製品特徴

・JAS認証材:機械等級区分製材に基づいて品質(強度・含水率)の確認と表示提供。
・より高い品質性能(高強度・高意匠性)の確保。
・選別材ながら、一般KD材(人工乾燥材)と遜色ない価格での提供を実現。

国産製材品の品質への取り組みは社会的ニーズ:JAS機械等級区分製材

現在、国交省が取り組んでいる建築基準法改正にて、JAS機械等級区分製材使用を記載する予定と聞く(全木検談)。また、既に法制化された低層公共案件の木造化に関しては、JAS認証の製材活用を明記している。 住宅においても、長期優良住宅認定制度や耐震化、4号特例廃止に伴う構造計算義務化等の状況に移行する事が予想される。構想計算に対して、グレーディング(機械等級区分)材活用は、本来なら必須項目の筈である。部材を推定強度で計算を行う事は意味を持たない。

しかしながら、構造用製材供給実績に占めるJAS材割合は僅かに5%しかなく、しかも、その大半が米マツという現状で、国産構造用の製材品のJAS供給は殆ど無いに等しい。これが現実である。

なぜ、これまで国産構造用製材品に、JAS認証への取り組みがなかったか?

多くの人が、国産木材の乾燥の困難さ、杉の強度劣勢等を理由とするが、筆者からすれば、それは本質ではないと考える。厳密には、木材関係者が、乾燥や強度確保等の課題への取り組みが決定的に不足していたと言うべきである。過去、日本では、建物及び木材の品質確保は、大工・棟梁(需要者側)の責任範疇であった。その事により、木材供給者の品質への認識は不足していた。それに起因して、現在の国産材関係者には、品質に対しての逃げ腰体質が蔓延していると考える。

上記の現実から、今後、国産構造材の主流は集成材に移行するとの意見を多く聞くが、この集成材需要が拡大する事は、素材のB価格需要(ラミナ製材需要)が拡大し、合板需要(B価格)拡大とも相まって、林家の林業収入の減少に繋がる事に帰結する。その上、現在の 純粋国産集成材(杉)には難点もある。

国産材における品質確保に対する取り組みが不足している事は上でも述べたが、その問題は、集成材用ラミナ製材にも波及している。聞く所によると、杉の集成材を製造している工場では製品の基準合格率が50%にも満たないとの事である。更には30%代でしかないと聞いた事もある。しかも、その強度基準はヤング係数E-68でしかない。労力とエネルギーを消費して確保する品質にしては不足感がある。当方のSSD JAS 球磨杉の標準寸法の桁材はJAS基準におけるE-70を採用する予定でいる。しかも、両者の工場出荷価格には大きな開きがある。(当方が安価)

品質性能確保手段としての芯去り製材

当方において、新規商品に高い品質を確保する為に、芯去り製材手法に着目し、その効率的且つ合理的製造法構築が期待出来る丸太状熱処理法を確立させて、採用するに至った。ここでは、その芯去り製材法の効用について述べる。

多くの木材関係者が、芯去り製材法は強度劣化を伴うと一概に信じている。筆者からすれば、それは間違いであり、正確には「柱等の正角材では強度が低下する物の、梁桁等の平角材においては高強度化が可能である」と言うべきである。更には「正角材については強度低下するも、一定の措置により建物性能確保には全く影響のない範囲で納まる」といえる。

加えて、従来の芯去り製材は高意匠性能確保の為の措置として採用されてきた。節の減少や柾目等の効果を得ると共に「干割れ」の軽減も期待出来る。これらを勘案すれば、正角材にて、明確な強度性能を確認した上で、適正な品質材を提供するにおいて、多少の強度低下があっても、商品的価値は、他と比較して、十分に優位性を保てるものと考える。

日本の森林の高林齢化に伴い、樹木が大径化している事は多くの人が既に御存知の通りである。この大径丸太の有効活用は今後の林業の重要な課題である。しかしながら、芯去り製材の採用が極端に少ない現実は、成長応力始め内部応力起因の反り・曲がり発生が最大の原因であると考える。製材時に帯のこが通過した途端に曲がり始める例も少なく無い。それに加えて一概に「強度劣化」との誤った理解による所もあると想像する。

丸太の断面と強度分布(バラツキ)の模式図

下図にあるように、丸太の断面を見た時の強度分布は、芯(髄)を最小として外に行く程強くなる。図では強度分布が同心円状になっているが、実際には年輪に沿って変化している。中心部と最外部においての強度の対比は1:3程度であるとされている。

梁桁材における芯去り製材の高強度化

下図は、同寸法の梁桁材を芯持ち製材と芯去り製材で強度分布との関係を比較したものである。芯持ち製材における高強度部位が極端に僅かにしかなく、しかも、上下に破断された状態で存在する事が判る。対して、芯去り製材は、部材に占める高強度部位の割合が多く、その上、上部から底部まで連続している事が確認出来る。この事により、当方の試作における実績では、概ね、ヤング係数がワンランク上昇する事を確認している。

同寸法の桁を確保する為に、より大きな丸太を必要とするが、現状では、市場において、400㍉以上の大径材が、需要のない事を理由に売れ残り、最終的にはチップ材に加工されている現実がある。今後、更に高林齢化に伴い大径木化が進む。

柱等の正角材強度を考察

従来の正角の芯持ち製材は、部材に占める高強度部位の割合は少ないものの、その部位が外面で連続して繋がっている。この事によりハニカムコア効果で高い強度を示している。これは、外面で繋がる部分の強度が部材全体の強度に影響を与えるものと考える。

対して、芯去り製材にはハニカムコア効果は期待出来ない。そのため、芯持ち製材よりも強度は低下する。しかしながら、図にあるように、より大径丸太の外側の高強度部位を活かし、その部材に占める割合を増やす事で、強度低下を抑制する事は可能である。SSDの芯去り製材では、この措置を行っている。

上図で従来製材の下部に示しているヤング係数の分布は、当方の従来の芯持ち製材商品の実績に基づく数字である。原木や乾燥法の特徴から高い強度性能を示している。対して、芯去り製材の試作では、従来商品のE-110以上は姿を消し、E-90も大幅に減少するが、大半がE-50・70に納まっている。当方としては、正角の基準をE-70以上と策定する予定でいる。

ここで考察すべき重要な事項は、杉柱における強度として、E-70が妥当であるか否かを検討する事にある。一般的木造住宅の建物強度を確保するにおいて、構造計算を行った場合に、計算は杉105角柱に対して、その大半にE-50の強度を要求してくる。それ以上の強度を求める場合は極稀で、その場合でも、一案件(柱100本以上)のうちの極数本に限られる。この事から、正角材に芯去り製材手法を採用した場合でもE-70の強度を確保する事で、商品としての安全性・有意性は保たれていると考える。必要なことは、その強度性能を明確に示して供給する事にある。E-50の品質を求められる部材に、E-110やE-130の部材を供給する事は最早自己満足の域を出るものでは無いと考える。

当方の従来商品の芯持ち正角は、高い強度性能を保持する物の、干割れの発生が課題として存在していた。干割れが有りながらも強度性能を確保していたが、ユーザー等の需要者に取っては、割れに対しての拒否反応が存在していた。必要以上の強度よりも、必要十分な数値を確保した上で、意匠性能を備えた方が、商品的価値は高いと判断した。

話は変わるが、現行の柱角製材において、少しだけ大きめの丸太から、外側で間柱等の板材を取り、中で柱を確保する手法が主流となっている。歩留まり率を向上させる為には効果的な手法であり、全自動のツインソーを設置する大型製材所では作業効率の高い方法である。しかし、改めて検証すれば、本来、特に強度性能を求められない間柱を高強度化し、対して、主材の柱の強度を低下させている事になる。

芯去り製材の干割れ軽減

上でも述べたように、当方が芯去り製材の商品開発に取り組む事になった直接の要因は、梁桁材の高強度化と共に、この干割れの減少を目的とするものであった。

表面割れの発生はないものの、内部割れが生じる上、木材にダメージを与えて、著しい強度劣化の危険性を内包し、梁桁等においては安定した乾燥精度もままならない高温式蒸気乾燥法が、国内の木材乾燥の主流となっている現状で、新規に木材乾燥法を開発する必要性を感じて、開発行為に着手した経緯がある。

当方の従来商品は強度を保持し且つ、梁桁においても乾燥精度の確保を現実のものとしたが、干割れの発生と言う課題が存在していた。その解決法が芯去り製材である。

下の図の上にあるように、干割れの発生条件は、概ね限られている。年輪が連続している部分において、芯(髄)に向かって割れが発生する。梁桁の端部で、製材により年輪が切断されている部分で芯部に向かう大きな干割れが発生する事はない。

芯去り製材では、この収縮で破断すべき連続した年輪が存在しない。乾燥過程において、表面と芯部の乾燥の速度の差から、表面のみの収縮が起きた場合には、表層部に小さな割れが発生する事もあるが、心材部の乾燥に伴う収縮によって、その小さな割れが消滅する事も多くある。

当方の試作においても、商品価値に影響を及ぼす様な割れは確認出来ていない。その上、必然的に発生する小口割れ(部材活用時に切り落とす端部に発生)が、極端に少なかった事には驚いた。

芯去り製材を可能にした丸太状熱処理技術

芯去り製材で発生する反り曲がりは、成長応力等の内部応力に起因する。樹木には、成長する為に外に向かう力と、それに対して、真っ直ぐに立つ為に反比例する力を常に内包している。その他、耐風力の為の力等、複雑な方向に向く力関係のバランスで直立している。その力を応力と呼ぶ。製材時に木材に鋸を入れ、このバランスを崩す事により反り曲がりが発生するが、芯持ち製材の場合には、木材の各部位の性格が、芯(髄)を中心にして同心円状に繋がっているため、バランスの崩壊が抑制出来る。対して、芯去り製材は部材の表と裏で物理的性格が異なる為に反り曲がりや捻れが多く発生する。

この内部応力緩和に、熱処理(水分存在を条件として80℃以上、48時間)が、効果的である事は、木材物理学の常識である。応力の素となるリグニンの軟化を誘発し、温度低下と共に再び硬貨する。

しかしながら、これまで、一定時間で、確実に材芯部まで熱処理出来る装置が存在しなかった。まして、丸太等の大断面の熱処理に、幾多の挑戦はあった様だが、評価に値する成果を認める事が出来ない現状があった。その中、SSD熱処理炉が、開発的行為に伴い。困難とされてきた丸太状熱処理が可能である事を熱処理装置の性能評価試験等で確認した。

上記結果に基づき、丸太状熱処理の特性を活かした製材品製造手法の開発に移行したが、その製造工程は以下の通りとなり、既存の固定概念を大きく覆す工程となった。

①素材→②丸太状熱処理→③製材→④乾燥→⑤仕上げ加工→⑥グレーディング選別。

この④の乾燥行程は、確実な熱処理故に、天日(自然)乾燥においても、柱等正角材で2週間程度、梁桁等の平角材は1〜2ヶ月程度で、概ね、20%以下の乾燥精度を確保する事が可能である。

上の図は、丸太状熱処理の実現により、高林齢化に伴う大径丸太の有効活用が可能となった結果の木取りの例である。ここで注目頂きたい事は、丸太状で熱処理を行う為に、主材から端材に至るまで、全てが必然的に乾燥材となる事である。

丸太状熱処理を実現した要因は、熱媒体に水蒸気の12倍の熱伝導率を持つ燻煙ガスを使用し、カーボンの遠赤外線による輻射熱効果、庫内の気圧環境の制御等が上げられる。従来の燻煙熱処理と異なる点は、補助バーナー及び庫内センサー設置等により、庫内環境の制御(自動電子制御)を可能にした点であると考える。

補助バーナーを設けながらも、主熱源は、燻煙ガス採取目的の木屑燃焼時に発生する熱を利用するため、石油使用量は、同等規模の蒸気乾燥機の1/3以下に抑える事が出来た。

高い歩留まり率を実現し、製造原価抑制に貢献

この製造手法の構築に伴い、完成品をJAS規定に沿って選別するにおいても、85%以上の高歩留まり率を確保する事が出来た上、大径原木丸太の有効活用、化石燃料使用量の抑制等から、製造原価を抑える事ができる。加えて、当方プロジェクトにて既構築済みの、資源豊富な産地と消費地を一気通貫で繋ぐ供給システムの効用等により、選別材ながら、一般KD材(人工乾燥材)と遜色ない価格での供給が可能になった。この事は、一般KD材と同等価格ながらも、品質観点からは、高いコストパフォーマンスを備えていると自負する。

下の写真が、当該商品の試作品(サンプル)の姿である。梁背240・270・300の桁材であるが、E-70の強度性能を確保・確認されている。その上での意匠性能は御覧の通りである。この画像にある梁桁が一般KD材と同等価格で提供出来る事は、上記の通りである。

2013.05.01撮影



文責者 SSDP事務局 渡邊豪巳


13/03/24
住宅着工戸数減少を見据えて「ストック型社会への移行」を考察する

左の表を確認頂きたい。これは2007年時点の人口1000人あたりの住宅投資額と着工戸数を先進国5カ国で比較した物である。2009年に国交省が公表したデータを基に作成されている。日本の着工数の多さと低い住宅投資額のアンバランスが一目で見て取れる。国交省データによれば、住宅投資額の対GDP比においても、日本3.3% 米4.6% 英4.0% 仏6.9% 独5.6%と日本が極めて低い。このデータから、日本人が、住宅の量産体制をもって短期間に建替え更新をしてきたのに対し、諸外国では、一軒の家を経費と労力をかけて長期に維持してきた事が読み取れる。この事は、国が「ストック型社会」への移行を進める中で、住宅産業が変革を迫られていると判断出来るのではないのか?

過去、経済的成長期にあった日本では、誤ったケインズ政策と住宅を含めた大量消費等で、ムダなハコモノや大量の空き家を造ってしまった。不必要な代物を、表層的利便性を口実に生産し続けて、経済構造を成立・維持させて繁栄と見せかけた上に、それに伴って、国内外の環境を破壊し、享楽的生活等で国民の思考能力を奪い去っていった。その最たる象徴が原発ではなかったのか? ムダとは、不必要を指すが、原発に限っては存在自体が許されない物であったことを3.11で思い知らされた。

真の心身の豊かさを求めるなら、表層的経済成果を求めてはならない。真の豊かさから積み上げられる経済効果がある筈だが、経済成長のみを優先する思考では置き去りにされる。いささか飛躍はするが、この観点から「ストック型社会」への移行は正しい方針と考える。その事を紐解いていく。

国としては、根幹部分で異なる思考をもっている事を想像するが、様々な事象の綾で、国交省の住宅政策方針としての「ストック型社会への移行」を将来ビジョンとして提示している。この事については支持する。あえて言えば、これは必然である。

住宅業界においては、着工戸数の激減を心配する声があるが、冒頭の表を見て考えを改める事を勧める。これ迄の画一的な新築中心の住宅産業から脱皮する事で生き残る道はある。既存建物の良質ストック化や新規ストックの品質確保によるコスト上昇、それら良質ストックを長期に維持する事等で市場規模は確保される。諸外国がそれを証明している。むしろ、日本ではGDP比においては伸び代がある。ただし、これ迄の、展示場等で住宅取得ニーズを待ち構え、見込み客を手練手管で口説き落とす営業手法しか思い描けないのであれば、速やかに退場した方が良いのかも知れない。今後の住宅関連の営業には、如何に消費者のライフスタイルに寄り添うかが問われる。着工数減を声高に心配する人の多くが、将来を見据えて研鑽を積む事も無く、今現在の駆け込み需要の取り込みのみに必至になっている姿、つまり、今しか考えてないと見えるのは、筆者の勘違いだろうか?

冒頭の表にある日本人の住宅投資額には、土地への投資や、ローン金利は含まれていない。日本で実際に住宅を取得するとそれらの負担も加算される。いわゆる「住まい」に掛かる費用総額は、表に示される金額の4倍〜程度となる筈だ。この金額を建物寿命30年程の期間をかけて支払い続けるのが日本の既成システムである。ここで、建物寿命が30年以上に延びればその分、負担は軽減される。各種省エネ手法で、長期にわたるランニングコストの軽減も累計すれば大きな金額になる。ドイツの様に建物の維持監理に多額の費用を掛けたとしても、建物寿命が60年以上になれば十分なお釣りが生まれる。しっかりと維持監理すれば、建物経年に伴う不都合・不便の発生も防げる。しかも、住宅関連の市場は拡大する。環境負荷も押さえられる筈である。住宅関連業者がストック型社会への移行を恐れる道理は無い。自らを変革させれば良いだけである。

高度成長期の、土地値上がり神話、所得向上神話に惑わされて、消費者は持ち家志向に走り、住宅ローンを組んだ。人生最大の買い物と粗同額の金利を金融資本に貢ぎながら・・・。しかし、時代は変わった。土地の値上がりを期待して安易に住宅ローンに取り組む人は最早いない筈だ。今、ローンを組んで住宅を取得する人の多くが、家賃と月あたりの返済額を比較検討して決断しているのだと思う。しかしながら、それも、デフレ不況が長期継続した上での消費増税である。安定収入に対しての不安感が大きくなっている。万が一の事態に自宅を手放しても、ローンの残債が大きくのしかかる。事実、住宅ローン破産が増加している現実がある。

現在日本人は毎年19兆円(恐らく土地を含むため冒頭表とは異なる数値)を住宅に投資しているが、国内の住宅価値の評価は240兆円程度で変化していない。この事は毎年の投資金額分の経済価値が既存している事を示している。この状態で、寿命30年の家を30年のローンで維持する事は、常に負債を抱えている事と同義の行いである。自宅放棄後の負債の残が確実な状況で、消費者は住宅取得に踏み切れるのか?これは「ストック型社会への移行」の阻害要因であると考える。住宅の評価及び再販価格に、実質の「資産価値」が反映する事を願う。幸い、国も僅かながらも対応し始めていて、良質ストックに関しては評価を見直す方針でいるようである。

ストック型社会へ移行したとしても、住宅産業に関わる市場は確保出来る事は理解頂けると思う。その上で、消費者にとってもメリットが存在する事も想像出来る。では、ストック型社会を支える良質ストックとは如何なる物なのか? 先ずは、経済的観点から見た時の「資産価値」とのワードで考えてみる。筆者が言う所の「資産価値」とは、直接的に「再販価格」を指す物ではない。消費者が住宅と言う資産を所得し、使用する事で得られる経済的メリットを指している。いずれは、この資産価値が再販価格に反映する事を願うし、ストック型社会形成の対して大きな貢献要素になると考えている。

これ迄、幾度も出てきたが、建物の長寿命化が資産価値の確保に繋がる事は既に理解頂いていると思う。ただし、日本で言う所の長寿命化とは、諸外国では当然の建物寿命(米 55年 英77年)であり、日本のそれが(30年)異常に短期間であった。建物の寿命が延びれば、その分、比例して経済的メリットは増大する。

次に省エネ対策である。建物に省エネ性能を確保することは、快適な住空間を確保するばかりでなく、ランニングコストの軽減になる。更に創エネ(太陽光発電・太陽熱給湯・蓄電池等)性能を付加し、現在の再エネ買取制度を活用すれば、実質の光熱費を無に近づける事も可能になる。

良質ストック住宅の資産価値に関する大雑把なシミュレーション
・ 一般的平均住宅33坪2000万円の建物に、長期優良住宅+ゼロエネ住宅性能を付加した場合の上昇コストを500万円と仮定する。
・ 寿命を60年と見て、30年でローン完済すれば、従来のローン・家賃分8万円/月が30年に渡り節約出来、総額2800万円になる。
・ 上記節約金額の半分を維持監理費用に充てたとしても、1400万円の効用が生まれる。
・ ゼロエネ住宅仕様の省エネ性能及び設備を確保して光熱費を1.5万円/月節約すれば、60年で1080万円の節約が可能。
・ 同じく、上記節約金額の半分近く(480万円)を設備の維持監理・更新に充てたとして600万円の効用が発生。
・ 双方の合計は2000万円となり、初期投資の500万円を差し引いても、最終効用金額は1500万円となる。
・ 仮に、60年の間に2回住宅を建設すれば、計4000万円となり、ローン金利を加えれば8000万近くになる。
・ 良的ストック住宅の場合は初期投資とローン金利合算で約5000万円。ここから効用分引けば、約3500万円。
・ 60年の長期にわたるシミュレーションではあるが、8000万円と3500万円の差4500万円は凄まじく大きいと言える。
・ この良質ストック住宅の付加的資産価値は1500万円であり、その効用は4500万円の効果があるといえる。
この良質ストック住宅を住宅関連市場から考察すると・・・
・ 60年の間に住宅を2回建設した場合の投資額は4000万円である。
・ 良質ストック住宅の場合、初期投資2500万円、建物維持費用1400万円、創エネ設備維持・更新480万円、総額4380万円
・ 約1割の市場拡大と判断出来る。

この良的ストックに対応する性能を有した住宅が、消費者に経済的メリットを提供する事を改めて確認頂けたと思う。実際には、消費税を始めとする庶民への増税攻勢、年金・保険等の段階的値上げ、セーフティネット削減等々による内需縮小とデフレ不況をしのぐスタグフレーションの危惧等、悲観的要素が膨大に存在している現状ではあるけれど…。この、良質ストック住宅が、住宅産業関連市場を拡大し、経済的効果を齎す可能性も理解頂けると思う。

既存の住宅市場からストック型社会へ移行するにおいて、消費者及び供給者に効用を提供しながらも、現状から比較した不利益を被るのは何処なのか? それは、住宅ローン収入が減少する金融資本と、売り上げが減少する電力会社等である。国民に蔓延する閉塞感を齎した原因の、いわば悪の両巨頭に、幾許かの鉄槌を浴びせながら、国民・市民が利得を享受出来る構造に、最大限の愉快・痛快感を覚える。何としても、是非とも、否、絶対にストック型社会への移行を成し遂げたいと考える。

良質ストック住宅の効用は「資産価値」なる経済的メリットのみなのか? そこには、情緒的との指摘を受けるかも知れないが、住まい手の意識の変化が期待出来ると思っている。建物を長寿命化するには、基本的建物性能確保と共に、住まい手の「手入れ」が必要となる。その意識を維持継続させる為には住まい手が「我が家」に対して愛着を寄せる事が必要であり、庭いじりならぬ「家いじり」の感覚が芽生える事が必要である。元来の日本人はこの感覚に長けていたと考える。しかしながら、高度成長期の消費文化の中で影を潜めてしまった。これまでの大量消費型住宅には、一見、スマートさとその時代の利便性を有していたが、愛着を獲得する程の魅力は無かった。デザインに飽きがきて、設備機器の更新時期がくれば「建替えよう!」との決断を導き出す、いわば「仕掛け」とも言える物が存在していた。その仕掛けの代表格がビニルクロスとシート貼り等の新建材なる擬い物であった。

現在、長期優良住宅やゼロエネ住宅、スマートハウスを手頃な価格で提供する住宅メーカーや大手ビルダーには、基本性能を有してはいるが、大量消費時代の尻尾を引きずり、且つ、コスト削減を理由にビニルクロスや新建材を使用している業者が殆どである。この手の住宅に、ユーザーは長期にわたる愛着を保てるだろうか? 結局、飽きがきて、寿命半ばで建替えとなると、目的は達せられないし、本質的なストック型社会の形成には程遠い物と思われる。

では、愛着を抱かせる住宅とはどの様な物か? これは個人の主観に左右される難しい問いではあるが、基本は本物の素材を使用する事と、住まい手に適度な手入れを要求する事だと考える。本物の素材の主役はやはり木材である。日本人は、有史以来、木と慣れ親しんだ文化を育み、その活用技術は世界屈指の物だった(過去形?)と考える。擬い物建材の殆どが木目を有している事からも、日本の木の文化が窺い知れる。本物の木には、経年変化と共に味わいが生まれる。適度な手入れでその変化も制御可能である。擬い物の木質建材は当初はシャープで美しいが、経年と共にその見せかけの魅力は無惨に色あせ、その上ケアも難しい。

数年前、近所に新築の住宅が建設された。恐らく、雨と太陽光で表面の汚れを落とすサイディングを使用していると思われ、壁面だけがいつまでも奇麗である。壁面以外には経年なりの変化が認められ、現在は非常に違和感のある、一種、薄気味悪い建物になってしまった、と感じている。一方、昨年、我が家の外装を築16年で塗り替えた。経年と共に適度に汚れて周囲になじんだ姿も気に入っていたが、塗り替えて蘇った姿には、極々僅かながらも感動した。春になれば、木製デッキの改修を自ら行う事を予定している。これらの手を掛ける行為や、その結果の小さな感動の積み重ねが愛着の起源となると考える。快適な住環境と安全を提供する事はもちろんの事であるが・・・。

真の良質ストックを目指して、本物を使用すれば、その分コストは増大する。それ故に上記シミュレーションでは高めの価格を設定している(60万円/坪)。しかしながら、愛着を持ち尚且つ長寿命化に繋がるのであれば、効果の高い投資となりうる。内装の木質化においても、多用すれば良い訳でもない。大概、その場合には野暮ったいイメージになってしまい、良質ストック化には設計(デザイン)能力も要求されると考える。画一的なマニュアルデザインに愛着が湧かない場合も十分に想定出来る。この木材を適度に使用した良質ストック住宅には、愛着を持つ事に伴い、住まい手の意識の変革が期待出来る。

高度成長期に植え付けられた「スクラップ&ビルド」の考えに基づく大量消費志向からの脱却。この事が期待したい変革の事象である。ストック型社会の形成には、サスティナブル循環型社会の実現も目的も含まれている筈である。愛着から派生した本物を慈しむ行為が、やがては、環境や自然、生命への馳せる思いを潜在意識の中に芽生えさせる。この思いを共有する人達が拡大するし、社会を支配する事になれば、その社会の有様も良的方向へ様変わりする物と考える。

筆者が携わる国産木材供給事業において、窮状に追いやられている森林・林業の再生には、付け焼き刃的で何かしらの魂胆が透けて見える政策や、ムダの散撒きに過ぎない予算措置等には全くの期待がもてない。ストック型社会の形成実現に伴う、国民・市民の意識改革、それもスローガン先導ではなく、生活の中から静かに涌き出す無意識とも言える意識の変化が、山を蘇らす為には、遠回りながらも、確実に成果を獲得する物と信じる。

文責者 SSDP事務局 渡邊豪巳


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