私共SSDプロジェクトが提供するSSDランバーは、国産無垢構造用製材品(主に杉・桧の柱及び梁・桁等)の1本毎に、グレーディングにより確認された強度性能と含水率を、JAS規格に沿って表示した上で、SSD品質基準に従って供給する製品の名称です。その品質を確保するために、主としてSSD乾燥法にて人工乾燥を施しています。

この製品を提供する行為は、現代の社会が、住宅を始めとする木造建築に対して求めている建物性能を、国産木材を活用して実現することにより信頼を獲得しそのシェア拡大に貢献することを目標にしています。

提供に際して、その製品の詳細な産地を証明した上で、生産から流通に至るまでの全ての関係者の責任の所在を明らかにするトレーサビリティを確立して、品質確保の担保としています。

現在、国産無垢材を使用して家を建てる場合において、部材の品質を確認する事無く工事がなされている事を、多くのユーザーは御存じない事と思われます。実際には、構造用木材の品質確保の基本となる乾燥自体が流通量に対して3割程度にしか施されていない現実があります。グレーディングされた部材については一般的には殆ど流通していません。

 

SSDランバーは、熊本県上球磨地域を産地とする杉、桧等を原材料に生産しています。日本三大急流として知られる球磨川の水源がある水上村、その隣の湯前町及び近隣の山々から伐り出される原木丸太に、湯前木材事業協同組合の発行する公的産地証明が添付される物のみを、SSD球磨杉、SSD球磨桧として取り扱っています。

この地域の木材(特に杉)は、他の九州産材に比べて、優れた強度性能と人工乾燥に適した性格を持ち合せています。加えて、化粧材としての使用に適した色艶、木目の美しさも兼ね備えています。

SSDの品質確保の試みは他の産地でも行いましたが、球磨杉・球磨桧を採用することで、初めて、現実的価格での品質表示材(グレーディング材)の提供実現が可能となりました。

上球磨地域水上村市房山の大杉群

国産材普及の考え方の中で、ECO的思考から、狭い地域(県単位)での地産地消の主張を見受けますが、私共は、事業規模での安定供給の可能な熊本県球磨地域を供給元に定めて、関西地区を中心に提供しています。これは、国産材需要の拡大には、大規模産地と大消費地のラインシステムの構築が必要との考えに基づいてのことです。又、現在の木材需要が、北米やヨーロッパからの輸入に頼っていることからすれば、立派な地産地消(国単位)であると考えています。

 

SSDランバーは基本的に、部材1本毎に、強度性能を示すヤング係数を計測の上、その結果を部材の個体自体に表示(印字)して提供します。その際に、後述のSSD品質基準に従って選別し、不合格材については除去したうえで、小割り材や野地板等に流用して有効利用をはかります。

強度計測に使用するグレーディングマシンは曲げ式計測装置で公的機関認定機種を使用しています。取得した計測データ(ヤング係数)は、部材自体に表示するとともに、製品ロットナンバー管理のうえ、当サイト上にて、計測時諸データ(たわみ数量及び荷重数値)と共に全てを公開しています。
 

SSDランバーは原材料(球磨杉・球磨桧)が元来持つ強度性能と、細胞組織を破壊しない乾燥法(SSD乾燥法)の採用等により、総体的に高い強度性能を持つ事が、グレーディングデータから見て取れます。

 

国産木材の品質確保とその表示において、最も苦慮するのが木材の乾燥です。特に杉は水分を多量に含んでお り、伐採時の含水率が200%を超える物も珍しくない、乾燥させる事の困難な樹種です。これに対応すべく開発 された乾燥方法が高温式蒸気乾燥法で、現在、国内で最もポピュラーな乾燥方法であります。

ただし、この方法は木材自体の強度の劣化を伴う乾燥方法であり、しかも、杉の桁材(梁背240 以上)等 断 面の大きな部材の乾燥には困難を伴う方法です。これらの事情が、国産材の品質表示供給が普及していない現状 についての理由の一つと推測されます。

しかし、国産材の流通量に占める乾燥材の割合が3 割に満たない現実は、これまで、国産材関係者が、技術開 発等の努力を怠っていたと言われても仕方の無い状況で、住宅建設に携わる立場からは理解に苦しむ問題です。

SSD プロジェクトが国産材の品質表示提供をおこなう事になったのは、それまでに取り組んでいた木材乾燥の 技術開発に一定の成果を得た事に由来します。そのSSD 乾燥法は特許取得装置での熱処理と桟積み天日乾燥によ る複合乾燥法です。この乾燥法により、これまで困難とされてきた杉の桁材も、一定の時間を要するものの(6 週間程度)、十分に乾燥させる事が出来るようになりました。この事が、国産無垢材の品質表示提供(グレーディ ング材供給)を実現可能にしました。

SSD 乾燥法(複合乾燥法)の熱処理は、一般的乾燥法で熱媒体として用いられる水蒸気に比べて、熱伝導率が はるかに高い燻煙ガス(水蒸気の約12 倍)を利用しています。この事により、炉内温度を100℃以下の中温域で 処理する事が可能になりました。高温式蒸気乾燥法では120 ~ 130℃で処理しています。この中温域帯で熱処理 すると、高温処理で懸念されている木材の細胞破壊が発生する事もなく、従って、木材自体の強度の劣化を伴う 事は有りません。

SSD 熱処理炉(写真左)
バーナー及び制御装置部(写真右)

この熱処理機は燻煙ガスを利用していますが、これまでに燻煙乾燥と呼ばれていたものとは意を異にします。 当方の装置は、あくまでも熱処理機であり、木材乾燥機ではありません。良好な熱処理環境を確保するため、バー ナーを補助熱源として設け、庫内温度等の制御機能を装備しています。

この熱処理は、木材の成長応力の緩和と、後の乾燥工程での精度確保と時間短縮を促す為の水分の運動誘発を 目的に行います。

木は、真直ぐであっても、その体内では多方向から引っ張りあう力のバランスで立っています。伐採や製材で 切り刻む事により、そのバランスを崩して、大きな力の掛っている方向に曲がります。これが木材の反り曲がり の一因です。この力(成長応力)を司っているリグニン(木の成分の一種)を熱によって軟化させ、応力を緩和 させるのが熱処理の目的の一つです。

もうひとつの目的が、木材内の水分の運動を誘発させる事です。材芯まで確実に熱処理を行い、細胞壁内に含 まれる水分(結合水)の運動を促し、後の乾燥工程での確実性を付加します。

熱処理を施された部材は、桟積みにして乾燥工程に入ります。現在は天日乾燥(自然乾燥)に委ねていますが、 確実な熱処理を行っているために比較的短い時間で含水率が低下します。柱等の正角材では1 ~ 2 週間、梁桁の 平角材では4 週間程度です。内部含水の低下が確認できた材から、順次、仕上げのプレーナー加工を施し、グレー ディング行程に移ります。グレーディングマシンに併設されたマイクロ波透過型水分計で部材の端から端までの 含水率を計測し、その平均値をJAS 規定の含水率区分に沿って部材個体に表示(印字)します。計測によって得 られた実数値は強度性能と共に、商品ロットナンバー管理のもと、当サイトで全て公開します。

この自然乾燥工程については、より確実な品質性能確保と時間短縮を目指して、技術(設備)開発の改善が必 要である事を認識しています。

 

SSD ランバーには乾燥による材の表面割れ(干割れ)が発生します。ただし、この干割れは部材の強度に影響を及ぼすことは有りません。この事は、数々の実験や研究で明らかにされています。

対して、高温乾燥材には表面割れは殆ど発生しません。この事が、高温乾燥が普及した一因でもあります。しかし、表面に見えない内部割れや細胞破壊に伴って、著しく強度が低下します。

SSDランバーは干割れの発生よりも、品質性能の基本である強度を重視しているため、品質基準で干割れの程度に上限を設けて、範囲内のものは良品として出荷しています。

木材の干割れは、乾燥による収縮から、その繊維を破断する事無く分離して発生します。その繊維が繋がっていることで強度を維持しています。ちなみに、施工後の割れを防ぐために、予め人為的に切れ目を入れる措置があります。背割りと呼ばれる方法で昔から恒常的に行われています。この背割りの場合は、繊維を破断するために、強度が1 割程度減少します。

 
干割れ
木材は比重の高いものが、低いものよりも割れやすい性格があり ます。同時に、比重の高いものの方が強度性能も高く、杉よりも総 体的に比重の高い桧の方が、強くしかも割れやすい事は、木材の常 識となっています。これは単一の樹種の中でも同傾向で、同じ杉でも、 より比重の高い個体の方が、高強度と割れやすい性格を持ち合せて います。この事を言いかえれば、干割れのある材が無いものよりも 強い、或いは、干割れの大きなものが小さなものよりも高強度であ ると言えるのです。
 

これらの事項は、日頃のSSD ランバーのグレーディング作業の中で、都度、確認されています。又、各種試験によって実証もされております。公開されている実証実験データ2 例を紹介します。

実験 1 スギ、ヒノキ構造用製材の乾燥割れや背割り加工が強度性能に及ぼす影響
池田潔彦 静岡県林業技術センター研究報告 2002 年度日本木材学会発表
乾燥割れが強度に影響しない事、背割りが強度低下を伴う事等が実証報告されています。

実験2 構造材の干割れと力学的性質
荒武志朗 宮崎県工業試験場工芸支場 1996 年 木材工業Vol 5
干割れが顕著なほど高い強度性能を持つ傾向を実証報告されています。

SSD ランバーは、品質性能においての強度確保を最優先に扱うため、干割れの生じた材であってもSSD 品質基 準に沿って良品として提供します。ただし、化粧(現し)で使用する部材においては、別途品質基準を設けて対 応しています。これらは、私共が、品質性能確保の本来目的を重要視して決断・選択した事項です。よって、干 割れをクレームの対象にする需要者(施工者及びユーザー)に提供する事は不可能であり、住宅性能確保の見地 から本末転倒であると判断します。しかしながら、強度性能を保持しつつ、干割れの無い(小さい)部材の開発 は必要です。現在、この事を念頭に置いた技術開発を鋭意進めております。現状においては干割れが発生する事 を御理解下さい。

 

SSDランバーは、公的認定の曲げ型グレーディングマシン及び併設のマイクロ波透過型水分計によって得られる計測データを品質判断の材料とすることで、その基準を策定し、SSD品質基準とします。内容については別紙一覧表を御確認下さい。

グレーディングデータ以外の項目の品質基準も策定しており、その際に、一般材と化粧材について、目的・用途の違いから、個別の基準を設けています。ただし、双方において、グレーディングデータが品質判断の優先項目である事を御理解下さい。

 

SSD ランバーは、熊本県上球磨地域の木材を使用し、球磨郡湯前町にある湯前木材事業協同組合(湯前木材センター)が発行する合法木材証明書の添付を義務付けております。これは、商品のロットナンバー管理に基づいた証明方法を湯前木材センターとの間で構築している事に由来しています。

この商品ロットナンバー管理により、部材1 本毎に、伐採時期と伐採地、品質情報、製造及び流通・輸送迄の関係者等の全ての必要情報を明確に証明する事が可能です。当方は、トレーサビリティを単なる産地証明ではなく、商品内容から関係者の責任所在まで明らかにすることで、品質確保を担保する手段と考えております。