国内初となる耐火木造の大型商業施設「サウスウッド」着工
―耐火性能を有する木材「燃エンウッド(R)」を採用し、駅前防火地域での木造建築を実現―
竹中工務店(社長:竹中統一)は、横浜都市みらい(社長:田中久幸)から受注した、国内初となる耐火木造の大型商業施設「サウスウッド」(横浜市都筑区)の施工に、本年7月1日、着手します。同施設は、開発の進む横浜市北部、横浜市営地下鉄「センター南」駅前に立地する地下1階、地上4階の商業施設で、2013年9月の竣工を予定しています。
本プロジェクトは、トータル・プロデュースをシー・アイ・エー、設計をE.P.A環境変換装置建築研究所一級建築士事務所(構造設計:竹中工務店/設備設計:総合設備計画)により、"Green Neighborhood"をコンセプトとした環境配慮型建築を目指し、「木造化」を積極的に導入したプロジェクトです。具体的には、木材(カラマツ)の内部にモルタルの耐火層を持つ、当社が独自に開発した耐火集成部材「燃エンウッド」を2~4階の主架構(柱、梁)に採用します。「燃エンウッド」は、建築基準法が定める1時間の耐火性能を有し、約9mスパン(柱間の長さ)の空間性の高い木造建築物を実現するものです。
本プロジェクトのような防火地域に建設される大規模建築は、建築基準法により耐火建築としての性能が求められるため、これまで木造での建設が困難でした。今回、柱・梁とも耐火集成材として国土交通大臣認定(柱FP060CN-0484 梁FP060BM-0311)を取得した「燃エンウッド」を採用することで、大規模な木造建築が実現可能となりました。
■木造市場背景
国内の森林資源の活用や人にやさしい木素材による居住環境の創出推進のために、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(2010年10月施行)が制定されました。現在、国が率先して木造率が低い公共建築物(平成20年時点で総延床面積の7.5%)にターゲットを絞り木材利用に取り組むとともに、地方公共団体や民間事業者にも国の方針に即して主体的な取り組みを促し、住宅など一般建築物への波及効果を含め、木材全体の需要拡大を目指しています。
今後「燃エンウッド」は、防火・耐火の規制により大規模木造建築の計画が困難であった、防火地域等での学校や病院などへの適用により公共木造建築物の普及・展開に寄与し、また、同地域等での商業施設や大規模事務所などへの適用により、人にやさしい居住空間の提供と、建設産業や林業の発展および自然環境の保全に貢献していきます。
■「燃エンウッド(R)」による大スパン化を実現
「燃エンウッド」は、2007年にスパン(柱間の長さ)4.5メートル程度の木造建築の柱や梁に使うスギ材による1時間耐火集成材として開発し、国土交通大臣認定を取得しました。その後、都心部の商業施設やオフィス等で求められる9メートルのスパンに対応するため使用木材を材料強度の高いカラマツに変更し、2011年12月、改めて1時間耐火集成材としての国土交通大臣認定を取得しました。このことから「燃エンウッド」を使用することにより、通常の建築確認申請手続きのみで4階建ての木造耐火建築物、もしくは最上階から数えて4階下の階までを木造化した耐火建築物を建設することが可能です。
当社では、2009年に、日本最大級の能力を有する新耐火実験棟(載荷能力30MN・8時間加熱)を建設し、大断面の構造部材を実物大レベルで実験が可能となったため、「燃エンウッド(R)」の新たな展開が可能となったのです。
■「燃エンウッド(R)」の耐火性能を確保する仕組み
「燃エンウッド」とは、積み重ねられた板(ラミナ)を接着剤で一体化した集成材と呼ばれる「荷重支持部」に、耐火性能を付与するための「燃え代層(もえしろそう)」と「燃え止まり層」を表面に貼り付けた耐火集成材です。
「燃え代層」には、カラマツ集成材を使用しています。火災が発生した場合には、最外層の「燃え代層」が断熱性能の高い炭化層になり、内部への燃焼進行を抑制します。また、「燃え止まり層」にはモルタルとカラマツ集成材を交互に配置し、モルタルで熱を吸収しながら完全に燃焼を停止させ、部材の中心部にある「荷重支持部」を火災から安全に保護します。
■「サウスウッド」概要
本プロジェクトは、再生産可能な循環資源である木材を大量に使用する大規模な木造建築物の先導的な事業であると評価され、国土交通省の木造建築技術先導事業(旧「木のまちづくり整備促進事業」)の助成事業となっています。
● 関連リンク
竹中工務店プレスリリース2012年6月27日 掲載記事転載