国交省 官庁施設の木造計画・設計基準を初改定 CLT追加し中高層可能に

国交省/官庁施設の木造計画・設計基準を初改定/CLT追加し中高層可能に  [2017年4月7日1面]

 国土交通省は木造の官庁施設の設計に関する技術的な事項や標準的な手法をまとめた「木造計画・設計基準」を改定した。関係法令や基準類の改正を反映させるとともに、木造の中高層建築を可能にするCLT(直交集成板)を追加。併せて資料編も改定し、図表や事例などを充実させた。木造建築物に関連する事項を網羅的に体系化したことで、地方自治体にも木材利用の促進に役立ててもらう。
同基準は直轄の官庁施設を対象に、木造の設計の効率化や必要な性能の確保を目的に11年5月に制定された。制定から5年余りが経過。この間、関係法令や基準・規格類が改定されているほか、政府がCLTの普及に向けたロードマップを策定して木材の利用拡大を推進するなど、木造建築物を取り巻く環境が大きく変化している。
社会資本整備審議会(社整審、国土交通相の諮問機関)が1月に答申した「官公庁施設整備における発注者のあり方について」には、当面実施すべき施策として「技術基準等の整備・活用」が明記されている。こうした状況を踏まえ、国交省は制定以来初めて同基準を改定。4月1日に運用を始めた。
具体的には新技術・新工法に対応。CLTを採用する建築計画の設計技術基準が建築基準法に基づく告示として制定(16年4月)されたことを踏まえ、建築構造の一つとして「CLTパネル工法」を追加した。同時に改定した「木造計画・設計基準の資料」には、CLTパネル工法の留意点として設計完了後に設備ルートの変更が困難になるケースがあることを明示。告示に基づく構造計算のフロー図を掲載している。
関係法令や基準・規格類との整合も図った。15年6月に全面施行された改正建築基準法で木造建築の耐火構造基準が緩和されたことを受け、防耐火や内装不燃の項目を見直した。不燃処理木材などの留意点を明確化し、官公庁施設の建設等に関する法律(官公法)の防耐火に関する規定を追加した。資料では、木材の表面が炭化して内部に延焼しにくくなる性質を利用して部材の断面を設計する「燃えしろ設計」に関する法令・規定や設計イメージ、事例などを充実させた。
国交省官房官庁営繕部では、各地方整備局の営繕部や国の発注機関のほか、都道府県・政令市でつくる全国営繕主管課長会議メンバーに改定内容を周知。地方創生に貢献する国産材の活用促進に向け、「地方自治体にも使ってもらいたい」(整備課木材利用推進室)としている。