山林:寄付増 相続税400万円ずしり 専門家「保護手立て、国全体で」

少子高齢化や都市化で管理の担い手が不足する山林を、自然保護活動をになう公益法人に委ねる動きが加速している。ただ、こうした公益法人の取り組みは限界もあり国に対策を求める声も上がる。

阪急電鉄・箕面駅から北東に約2キロ。大阪府箕面市の山中のハイキングコース沿いに、コナラやツツジが立ち並ぶ。同市の会社員の女性(55)は昨年、義母(81)が所有するこの雑木林を大阪自然環境保全協会(大阪府)に寄付する手続きを手伝った。面積は少し離れた人工林と合わせ約9400平方メートル。「高齢の義母と私だけではとても管理できなかった」と打ち明ける。

山林は義父が相続して管理を続けたものの、2012年に亡くなり、義母が受け継いだ。その2年後には女性の夫も他界し、体調の優れない義母との2人暮らしに。義母が亡くなれば、市内で別居する自分の長男(29)が相続予定だったが、税理士に「相続税が400万円」と言われ処分を真剣に考え始めた。

15年2月、環境NPOが開いた土地の悩み相談会で、協会が自然保護の寄付を受け付けていると知った。「自然を維持してもらえるなら」と決断した。

協会が受けた寄付はこれまで2件にとどまるが、相談だけなら約20件。岡秀郎理事は「売られて開発されたり、放棄されて荒れたりするのを防ぎたい」と今後もできるだけ対応していく考えだ。

ただ、限界もある。譲り受けた土地で事故などが起きた場合、責任が問われるおそれがある。「災害で木が倒れるリスクもあり、簡単に受け入れることはできない」と岡理事。土砂災害のおそれがある土地の寄付を断っている公益法人もある。

林野庁によると、国内の森林の約6割は個人や法人などが所有する私有林。山林の法制度に詳しい牛尾洋也・龍谷大教授(民法)は「自然保護団体の土地取得は本来、開発などから自然を守るためで相続や管理放棄の対策が目的ではない。日本は険しい山が多く、団体でも簡単に維持管理できないケースもある。山林をどうしていくか、国全体で考えなければならない問題だ」と指摘している。

寄付された山林を見学する大阪自然環境保全協会のメンバーら=大阪府箕面市で2017年1月、畠山哲郎撮影

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