ビルに国産木材後押し 政府が標準規格、需要拡大へ

政府は中高層ビルなどの大規模建築物への国産木材の利用を促す。海外で高層建築にも利用実績がある「直交集成板」(CLT)と呼ばれる木質資材の国内普及に向けて標準規格を作成。消費地近くでの同資材の製造拠点整備には国が助成し、普及のネックとなる価格の引き下げにもつなげる。割安な輸入木材に押され気味の国産木材の需要拡大を後押しする。

政府は近くCLTの利用促進に向けた2017~20年度の行動計画を正式決定する。「普及に向けた需要の拡大」を最重要課題に位置づけ、20年度には生産量を現在の2倍にあたる10万立方メートルへの引き上げを目標として明記した。

CLTはCross Laminated Timberの略で、木目が直交するように厚板を何層にも重ね合わせた資材で、木材特有のそりや狂いが低減し、強度や耐火・耐熱性に優れる。鉄筋コンクリートに比べて建物の重量を軽くすることができるため、中大規模建築物での基礎コストなどを軽減できるメリットもある。

すでに欧米で普及が進み、カナダや米国などではCLTを使った高層建築も建てられている。しかし、日本では価格が一般的な工法より2割高いことなどが障壁となり、普及が遅れているのが実情だ。CLTを使って全国で建てられた建築物は16年末で53棟にとどまっている。

2017/3/27 13:00日本経済新聞 電子版

政府がまとめる行動計画ではCLTの資材価格を1立方メートルあたり7万~8万円へと現状から半減し、施工コストを他工法並みに引き下げることを目標に掲げる。サイズや木質などよく使われるものに沿った標準規格を17年度中にも策定。汎用化を進める。CLTを使った先導的な建築物や実験棟などには補助金を出すことも検討する。

都市部など消費地や物流網に近い場所でのCLT工場の整備には助成することも検討している。生産・流通の過程を効率化する狙いだ。CLTを使った設計や施工に必要な人材を確保するため、講習会や研修会を国や地方自治体が実施することも計画している。

公共施設での国産CLTの活用促進も進める。行動計画では地方自治体が整備するバスの待合所や集会所などの公共施設のうち、18年度までに各都道府県に最低1棟を整備することを盛り込む。行政が建築のモデルづくりを主導し、民間企業の需要を喚起する。

農林水産省によると、14年の木材生産額は2354億円と1980年の4分の1に減った。木造住宅の新規着工が減り、輸入木材も増えたためだ。住宅着工戸数は今後も減少が見込まれ「住宅だけでは需要減を避けられない」(林野庁)との懸念が強い。

政府は25年度までに木材自給率を50%に高める目標を掲げる。有力な産業に欠ける地方の中山間地などでは林業での雇用創出への期待が高い。