林業再生 新建材 用途拡大に期待 高品質丸太の需要増が課題

岡山県真庭市は市内の8割を森が占める。2018年春に4校の統合で開校する北房小学校は、岡山県産の木を校舎に使う。総量は約2000立方メートルと、一般的な木造住宅83戸分。その半分を占めるのが新建材「直交集成板(CLT)」だ。

CLTは木目が直交するように板を何層も重ねている。耐火性が高く、欧州では高層ビルにも使う。真庭市内に本社がある銘建工業は有数のCLTメーカーだ。昨年は壁や階段にCLTを使ったホテルも市内に登場した。市の担当者は「率先して利用を訴え、需要を喚起したい」と話す。

農林水産省によると、14年の木材生産額は2354億円と1980年の4分の1に減った。木造住宅の着工減と輸入材普及の結果だ。野村総合研究所は30年度の新設住宅着工数を、15年度比で4割減の約54万戸と予測した。森林組合は「住宅だけでは需要減を避けられない」と不安を抱く。

関係者が望みをかけるのが大型施設だ。林業調査で森林組合と住宅メーカーに期待する建築分野(複数回答)を聞くと、84%が公共施設、52%が商業施設を挙げた。20年の東京五輪で主会場となる新国立競技場は、屋根だけでも木造住宅75戸分にあたる約1800立方メートルの木材を使う。

従来の木材は燃えやすさがネックだった。耐火性が高く、大型施設にも使えるCLTへの関心は高い。林業調査では森林組合と住宅メーカーの88%が「期待している」と答えた。日本CLT協会(東京・中央)は17年の生産量を前年の4倍の2万立方メートルと見込む。中国地方の森林組合は「CLTが普及すれば仕事が増える」とみる。

原子力発電所の再稼働が遅れ、再生可能エネルギーの活用に注目が集まる。間伐材や端材を使う木質バイオマス発電もその一つ。調査では87%が期待すると答えた。広島県呉市の中国木材は、関連会社を含めて5万5850キロワットの発電能力を、19年中に7万9700キロワットまで高める計画だ。

ただ新たな用途を開拓しても、難題が残る。CLTや木質バイオマス発電は、主に角材に適さない曲がった木を使う。収入の柱となる高品質丸太の需要にはつながらない。山陰の森林組合は「低単価の需要拡大は意味がない」と言い切る。一方、住宅メーカーの61%は林業の課題(複数回答)に「高コスト」を挙げた。売る側と使う側の意識の開きも大きい。

国は25年度までに木材自給率を50%に高める目標を掲げる。調査で達成の見通しを聞くと「実現できると思う」が51%、「難しい」が49%とほぼ並んだ。コストの削減と安定収入の確保を両立させながら、いかに需要を伸ばしていくか。課題はなお多い。

伊地知将史が担当しました。