杉無垢板の横架材直張りによる面剛性の確保
近年の木造建物において耐震性能等の建物強度を確実に確保するために、耐力壁と同様に水平構面(床組み等)の剛性が重要視されるようになってきました。以前の木造建築ではこの水平構面の剛性を「火打ち」と言われる措置などで賄っていましたが、その強度は概ね0.5倍(床倍率:構面の強度の尺度)程度でした。最近では横架材に厚板合板を直接貼り付けることで1.2倍~3倍の構面剛性を確保する工法が主流となっています。
構造用木材に無垢材を志向されるユーザーの方々の中には接着剤を多量に使用する合板に頼らない家造りを望まれる方が相当数存在されていますが、建物強度と自然素材のどちらを優先するかの選択を迫られるケースを度々見受けました。SSDプロジェクトでは、自然素材の無垢構造材にグレーディングで品質を明確にしたことと同様の思考で、脱合板・脱集成材の家でありながらも明確な根拠に基づく耐震性能を実現すべく様々な工法の開発等を手掛けてきました。
その一つが杉無垢本実板による水平構面の剛性確保です。杉板の形状やサイズ、使用する釘の種類、本数、打ち方等を検討の上、合板と同等(釘川の字打ちの場合)の床倍率1.15倍の公的データを取得するに至りました。このデータを活用するには杉板の厚みを30㎜以上確保した本実形状で尚且つ、十分な乾燥がされていること等が必要条件となりますが、受け側の横架材が一定以上の品質を確認・保証された部材で構成されている事も肝心です。
この開発結果においても公的試験機関(宮崎県木材利用技術センター)の試験にて実証の上、公的データとして取得しております。これらの公的データ(前述の金物使用含む)を活用するには構造計算時にデータを反映さるなどの構造計画を作成し、公的データの根拠となる試験成績書等を審査機関等に提示する必要があります。
尚、SSDプロジェクトでは、当該工法採用に必要な杉無垢本実板(130×30×2000)を下地用と化粧用の2種類用意して提供しています。詳しくはメールにて事務局までお問い合わせ下さい。
杉無垢板の水平構面データを活用して、1階天井を現し工法にした例。床倍率1.15倍で構造計算に反映させている。木表の仕上げ面を下に向けて横架材に直打ちして、2階床を構成している。
勾配天井の屋根野地板と化粧天井材を兼ねて杉無垢本実板を活用した例。この場合、水平構面剛性を勾配を考慮した軽減値にて、2階天井面剛性として構造計算に算入して評価する。
SSD技術
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