国産材輸出、41年ぶり高水準 米中摩擦で翻弄も
2019/2/28 16:05 日本経済新聞 電子版
スギなど国産材の2018年の輸出額が350億円を超え、41年ぶりの高水準となった。中国が丸太を中心に大量に調達、中国向け輸出額が9.3%増の158億円と大幅に増えたためだ。ただ昨夏以降、米中貿易摩擦の余波で輸出量が増減している。中国の景気減速や米中交渉の行方を心配する声も出ている。
農林水産省によると、18年の輸出額は前年比7.4%増の350億7000万円。1977年の366億円に迫り、68年のピーク(414億円)もみえてきた。ここ5年で2.8倍に拡大、うち中国向けは4.6倍となった。輸出額の45%を中国が占め、輸出増をけん引した。
中国以外では米国向けが前年比で3割、台湾向けは2割増えた半面、韓国は日本のヒノキ需要が一巡し1割強減った。
品目別ではスギなどの丸太が伸びた。輸出額は8.2%増の148億円で全体の42%を占めた。輸出量は19.3%増の115万立方メートルと100万立方メートルの大台に乗った。
丸太の最大の輸出先は中国だ。94万立方メートルと22.2%増え、5年で7.3倍に膨らんだ。世界最大の針葉樹丸太輸入国である中国の輸入量(17年で3841万立方メートル)から見れば僅かだが、増加傾向が続く。
日本のスギ丸太の中国向け価格は現在1立方メートル140~150ドル(運賃込み)前後。1年前より10~15ドルほど高いが、中国が主に調達するニュージーランド産松材とほぼ同じ手ごろな水準。安い木材を大量に買う流れに日本の丸太も乗った。
中国が廉価な木材を欲しがるのは、中国で作った製品などを傷つけずに運ぶうえで必要な梱包材など消耗品に近い分野の内需が底堅かったためだ。
米国向けの加工貿易需要も重なった。米国では戸建て住宅用の木製フェンス需要が堅調。「中国の製材企業が日本の丸太を木製フェンスに加工し米国に輸出する需要が伸びた」(日本木材輸出振興協会=東京・文京)
丸太輸出が盛んな鹿児島県と宮崎県の4森林組合で構成する木材輸出戦略協議会では、18年度の輸出量が約6万立方メートルと前年度比1割増を見込む。堂園司会長は「中国との丸太取引を足がかりに、今後は住宅の柱やはりなど構造材でも取引を増やしたい」と意気込む。
懸念材料は米中貿易摩擦の行方だ。昨年8月に米国が中国への制裁関税第3弾を発動すると伝わると、中国の日本産丸太の需要が一時停止。8月の丸太輸出量は前年同月比1割減った。中国の木材には10%関税が上乗せされたが、中国側は影響は軽いと判断して調達を再開。9月は反動で同7割増えた。
12月には追加関税が25%に上がるとの観測で再び中国の調達がストップ、丸太輸出量は同2割減った。米中交渉期限が延期され、「またすぐ対中輸出は増える」(大手商社)との楽観論もある。
仮に米中協議が難航し米国の対中関税が25%に上がれば「日本で加工したフェンスを米国に直接出せるチャンスが広がる」(堂園会長)。 国産材の輸出増は「日本の木材が国際市場に組み込まれつつある」(大手商社)ことを表すが、その分米中に翻弄されるリスクも高まる。(関口圭)